[アンケート企画]
わたしの好きなヒストリカ

あなたの好きな歴史劇
(ヒストリカ)を
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コメントは届き次第、随時更新します

山下 敦弘
[映画監督]

天国の門
監督:マイケル・チミノ(1980)

莫大な予算を投入し、病的に思えるくらい1890年代のワイオミングを再現した結果、なんとも言えない侘しさ、虚しさ、切なさが映画から滲み出ている。『天国の門』の無常観はCGでは不可能だと思う。

村上 章
[映画ライター]

斬る
監督:岡本喜八(1968)

娯楽活劇としても時代劇としても最愛の一本。原作者が同じこともあって『椿三十郎』と話が似ているが、小藩に起きたお家騒動を、流れ者のヤクザと侍になりたい農民コンビが解決に持ち込むのが小気味いい。軽妙と重厚、カッコよさと可笑しさのさじ加減が絶妙で、番傘が並ぶラストカットも粋。

阿部一族
監督:熊谷久虎(1938)

実話をベースにした森鴎外の同名小説を東宝と前進座が映画化した、武士の殉死と名誉を巡る封建社会の不条理劇。ほぼ全編を熊本の方言で押し通し、正直字幕が欲しいレベルだが、異様な迫力と説得力に呑まれる。

たそがれ清兵衛
監督:山田洋次(2002)

凄惨なクライマックスの果し合いまで、寸止め状態のまま日常描写を丹念に積み重ねる。武家社会における個人の葛藤を通して、当時を生きた人たちの息遣いが感じられるような傑作。宮沢りえがたすきをかける所作も必見。

金子 雅和
[映画監督]

彷徨える河
監督:シーロ・ゲーラ(2015)

時間というものが縦に直線的に流れているのではなく、ひとつの土地を媒介としてレイヤー状に折り重なって存在している、という南米原住民の時間空間認識を見事に映像化した、近代以降の西洋的な歴史観とは違う視点が素晴らしいです。

アンダーグラウンド
監督:エミール・クストリッツァ(1995)

ひとつの共同体の存亡と、戦争の愚かさというシリアスな題材を、ガルシア・マルケス的なマジックリアリズムで描いていて、宙を舞う花嫁やラストシーンの衝撃は、初見から20年以上経っても鮮明な記憶として残っています。

ウィッチ
監督:ロバート・エガース(2015)

ホラー映画というジャンルの中で、文化人類学的なリサーチと美術造形により、かつての人間にとって「魔女」とは何だったのか、を描き出す非常に知性的なエンタテインメント映画だと思います。アニャ・テイラー・ジョイとブラックフィリップ(山羊)のファンになりました。

山椒大夫
監督:溝口健二(1954)

この作品に限らずですが、とにかく宮川一夫撮影監督の絵が好きです。フィックスでも移動でも、これ以上なくばっちり決まった構図、そして水の美しさ!

入江 悠
[映画監督]

次郎長三国志 (東宝版)
監督:マキノ雅弘(1952〜54)

わたしにとって、映画が好きな要素がほぼすべて入っているといっても過言ではない一作。 旅情、高揚、祝祭、チーム感、そして恋。何度観ても初見のように心踊る。

谷 慶子
[脚本家・スクリプター・立命館大学准教授]

アマデウス
監督:ミロス・フォアマン(1984)

映画の世界に漠然と憧れていた頃に出会い、その後の方向を決めることになった作品の一つ。無限の可能性を感じた。絢爛豪華な衣裳や美術の中で描かれる人間のドロドロした感情や天才の狂気、とにかく何もかもが鮮烈で、言葉にできないものをたくさんくれた。今でも見る時は気合が入る。気楽には見られない重厚感と醍醐味、私の憧れた映画の世界がそこにある。

飯星 景子
[作家・タレント]

人情紙風船
監督:山中貞雄(1937)

善悪貧富権力など二極では人間は割り切れぬという話を、わずか86分で優しく切なく描き切った当時の日本の成熟度に驚きました。監督は当時28歳。あの衝撃は忘れられません。

宮崎 大祐
[映画監督]

次郎長三国志シリーズ (東宝版)
監督:マキノ雅弘(1952〜54)

アメリカ映画ばかり見ていたわたしが日本の時代劇にはじめてのめり込んだシリーズ。ドラゴンボール、ドラゴンクエスト世代のわたしに直撃したのはもちろん、今のMCUや鬼滅ファンにも響くこと間違いなしであろう全人類の宝。

英月
[大行寺住職・映画コラムニスト]

羅生門
監督:黒澤明(1950)

登場人物たちが生命力にあふれ、とても魅力的。そして、映画のラスト。羅生門から一歩を踏み出す男に光がさすシーンは、困難があっても大丈夫、そう呼びかけられているようで心に響きます。

ミルチョ・マンチェフスキ
[映画監督]

アマデウス
監督:ミロス・フォアマン(1984)

皇帝ヨーゼフ2世の宮廷を彩る実在の人物たちや、天才モーツァルトの中に存在する人間味の描かれ方が気に入っています。

羅生門
監督:黒澤明(1950)

最も人間的なものである「主観性」についての映画的表現に敬服します。

アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ
[元駐日マケドニア共和国大使]

雨月物語
監督:溝口健二(1953)

上田秋成の小説を基に夢、伝説、現実、おとぎ話などの不思議な世界を創り出しながらも、戦国時代末期というとてもリアルな時代を舞台にしているというところに魅了されました。観る人の目の前で浮世絵のように展開し、物語の中で、愛、忠誠、フェミニズム、人間性など、複雑で深いテーマを紡いでいく映画です。

部谷 京子
[美術監督]

羅生門
監督:黒澤明(1950)

黒澤明監督は私がこの世界に入るきっかけになった監督です。黒澤組に参加出来る迄この仕事を続けると言い続けて、「夢」「八月の狂詩曲」で夢を実現。その黒澤監督作品の中で一番好きなのが「羅生門」です。真実はどこにあるのか。同じ事柄が視点を変えると違って見えるというのは現代に通じる永遠のテーマ。何度でも見直したくなる作品です。

小山 明美
[コンシェルジュ]

ベートーヴェン不滅の恋
監督:バーナード・ローズ(1994)

クラッシック音楽家の人生を描いた作品の中でも秀逸な作品だと思います。中でもゲイリー・オールドマン演じるベートーヴェンが「ピアノ・ソナタ第14番 月光」を演奏する場面は、絶望そして美しさが共存する名シーンです。

西尾 孔志
[映画監督・映画祭企画ディレクター]

ひばり・チエミの弥次喜多道中
監督:沢島忠(1962)

若い女が男に扮し、ヤジさんキタさん、歌いながらの逃避行。か弱くないぞ本気を出せば、アナーキーに大暴れ。女二人に男は要らぬ。夢と友情でめでたしめでたし。60年代に生まれた奇跡のガールズ時代劇。

1987、ある闘いの真実
監督:チャン・ジュナン(2017)

庶民の手で民主主義を勝ち取った歴史的事件を群像劇として描いた感動作。小道具や映画的な技も効かせまくりで、韓国国民じゃなくても盛り上がる。こういう娯楽大作の国民的映画があるのをちょっと羨ましく思う。

吉開 菜央
[映画作家・振付家・ダンサー]

『ジャネット』『ジャンヌ』
ブリュノ・デュモン監督(2017)

自分の状況と重ね合わせずにはいられませんでした。自らの意思で火あぶりにされるジャンヌの物語がおとぎ話で済ませられないことは、SNSなどにおける誹謗中傷や、ネットニュースに感化されて大規模な暴動が起きている現実を見れば明らかです。ジャンヌが「聖女」でも「魔女」でもなく、普通の羊飼いとして生きられることもあるはずだと、わたしは映画をみて、謎の希望が湧きました。

内田 伸輝
[映画監督]

楢山節考
監督:今村昌平(1983)

今村昌平監督は、人間も地球の中で生きる動物だ。と気づかせてくれる。そのうえ、1番残酷な動物は人間である事を容赦なく描写し、その姿はとても滑稽で笑え、笑ってしまった自分に後ろめたくなる。大好きな作品のひとつです。

清原 惟
[映画監督・映像作家]

アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記
監督:ストローブ=ユイレ(1968)

音楽が賑やかに流れるにも関わらず、どこまでも静かで美しいことが、いつ観ても不思議でなりません。バッハの妻の視点によって語られるのですが、歴史の中には常にそれを見ている誰かの眼差しが存在している、ということを教えてくれる映画だと思います。

伊藤 弘了
[映画研究者、批評家]

丹下左膳餘話 百萬兩の壺
監督:山中貞雄(1935)

山中貞雄の傑作時代劇。1938年に28歳の若さで戦病死した山中の監督作品はほとんどが失われており、まとまった形で現存しているのはこれと『河内山宗俊』(1936年)、『人情紙風船』(1937年)の三本のみ。正確無比なテンポと隙のない画面構成のなかに、底なしのユーモアとのっぴきならない残酷さを同居させる手腕は天才としか言いようがない。

椿三十郎
監督:黒澤明(1962)

黒澤明が放つ娯楽時代劇の決定版。知略家でありながら腕利きの剣豪という超人的な主人公・椿三十郎を三船敏郎が演じる。高速の殺陣で魅せてくれたかと思えば、静謐から一気に過剰な破局へと至るラストシーンで観客の度肝を抜く。初めて見る黒澤映画として『用心棒』(1961年)と並んでおすすめの一本。

切腹
監督:小林正樹(1962)

小林正樹が初めて手がけた時代劇。食い詰め浪人の狂言切腹という意表をつく題材から武士道の虚飾を暴き、のみならず、今日的なテーマにまで昇華させている。主人公を演じた仲代達矢の怪演も見どころ。原作を同じくする三池崇史監督の『一命』(2011年)とも見比べてみてほしい。

横浜 聡子
[映画監督]

好男好女
監督:侯孝賢(1995)

過去と現在の軽やかな横断。でもすぐに時制が分からなくなり、過去すら現在として、今ここにいる人として立ちあらわれる不思議。映画ってこんなすごいことができるんですね。

安川 有果
[映画監督]

天安門、恋人たち
監督:ロウ・イエ(2006)

天安門事件を背景に、当時の若者たちの⻘春とその終わりが描かれます。主演のハオ・レイ の息遣いすらも聞き逃すまいと寄り添うカメラワークにより、彼女の焦りや怯え、激しい感情の揺れ動きがダイレクトに伝わってきて、映画館で呼吸が乱れる初めての経験をしました。また映画館で上映されることがあったら絶対に見たいと思っている作品です。