

『近松物語』
第30回東京国際映画祭日本映画クラシックス@京都ヒストリカ4Kデジタル復元版監 督:溝口健二
出 演:長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎、小沢栄
制作国:日本
制作年:1954
時 間:102min
配給: KADOKAWA
あらすじ
四条烏丸に立派な看板をかかげる大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、御所の役人と同じ格式を誇っていた。毎年の暦の刊行権も持ち、収入も大きい。その地位を鼻にかける当代以春は再婚して若い妻・おさんを迎えていた。ある日、手代の茂兵衛はおさんから、兄の無心に苦心していることを相談され、店の金を一時用立てる。それが以春の知るところとなり、茂兵衛は空屋に軟禁された。その夜、女中のお玉から、以春が毎夜のように寝間に忍んでくることを聞いたおさんは、代わりにお玉の寝床に入り、夫をいさめようと待っていた。ところがそこに現れたのは、以春の追求をかばったお玉に礼を言いに来た茂兵衛であった。運悪く、それを見つけられた二人は不義密通の罪を負わされる。不祥事をもみ消そうとする以春。しかし、おさんと茂兵衛は、闕所、磔獄門を覚悟して家出する・・・。
みどころ
京都を拠点に世界の映画史に残る作品を送り出した巨匠溝口健二監督の代表作の一つ。2017年に国際交流基金の助成をうけ、KADOKAWAとマーティン・スコセッシ監督が主宰するニューヨークのフィルム・ファウンデーションにより4Kデジタル復元され、ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミアされた。時代の緻密な描写を背景に必然的な筋道をたどって悲劇が深められてゆく。それにシンクロして、可憐な若妻に死の影がまとわりつき、凄惨な美しさが漂いはじめる。クライマックスでは覚悟を決めた男女の崇高さが心をうつ。最新のデジタル技術で甦る大映京都撮影所の美術、撮影、照明等々職人芸の極致をご堪能ください。
監督:溝口健二
1898年、東京湯島生まれ。1923年、日活向島の『愛に甦へる日』で監督デビュー。関東大震災により京都に製作拠点を移す。日活から第一映画に移籍、脚本家依田義賢を得て『浪華悲歌』(1936)、『祇園の姉妹』(同)と傑作を連発。松竹下加茂での芸道物『残菊物語』(39)でワンシーン・ワンカットの独特の映像表現を表出。超特作映画『元禄忠臣蔵』(41・42)で名実ともに日本映画界を代表する監督になる。戦後、大映京都撮影所で『雨月物語』(53)、『山椒大夫』(54)と次々と大作を発表、ヴェネツィア国際映画祭に出品され、前年の『西鶴一代女』を含め3年連続の入賞を果たし世界の溝口となる。『近松物語』(54)では封建制度下の人間性の抑圧と反抗、悲恋を描いて芸術選奨を受けた。1956年逝去、享年58歳。