

『緋牡丹博徒 花札勝負』
監 督:加藤泰
出 演:藤純子、高倉健、若山富三郎、藤山寛美
制作国:日本
放送年:1969
時 間:98min
配給: 東映
あらすじ
お竜は熱田神宮勧進賭博を控えた西之丸一家へ草鞋を脱いだ。対して金原一家の金原は、名古屋一の貸元の座を狙っていた。そんな折、お竜は自分の名を名乗る女賭博師お時を捕えた。お時は盲目の子お君の目を直したい一心にイカサマをやり、金原にその腕を利用されていた。西之丸の息子次郎は、金原の娘八重子と恋仲だった。金原はお時にイカサマ賭博で次郎をだまし人質にする。お竜が次郎を探していることを知り、お時は二人を逃した。お時は金原に斬られ、二人はお竜に守られて大阪へ逃げた。やがて金原一家を尋ねたお竜が監禁された。金原に草鞋を脱いだ旅人とお竜。渡世の義理で敵対する二人だが、イカサマで人を弄ぶ金原に堪えた怒りが燃え上がる。
みどころ
松竹での数本を経て東映に戻った加藤泰を迎えたのはスターになった藤純子の人気シリーズの第3作。盲目のおきみを抱えたニセお竜、対立する博打打ちの息子と娘のロミオとジュリエットばりの恋愛、渡世の義理で人殺しを任される旅人、いつもの若山富三郎と、物語がめまぐるしく入れ替わり、クライマックスに移ろっていく。そうした荒事も難なく片付ける描写力の確かさは、他流試合を経てスタッフ・キャストを緩急自在に動かせる自信と体力の賜物だろう。こうしたジャンルを横断するようなお祭り映画もまた加藤泰のユニークな味であることは間違いない。カットとカットが鬩ぎ合うような荒々しいモンタージュが描く活劇の躍動感は初めて映画なるものを観てしまったような驚きがある。

監督:加藤泰
伊藤大輔作品など無声映画に夢中になり、叔父の監督・山中貞男を 頼り映画界に入る。51年に監督デビュー、東映を中心に時代劇・仁侠映画を監督する。60年代以降は各社で大型の作品にジャンルを越えて挑み、固定・ロー アングル・長廻しの手法と映画原初の力に溢れた活劇で評価を確立した。社会の枠外にいる男女の情熱と生きざまを慈愛と憤怒で物語り、ワイド画面の奥までに活きた人間が横溢する画面を作る凝視の演出力は世界映画史で異彩を放つ。98年のロカルノ映画祭での特集上映は、シネフィルを驚愕させる事件となった。ドメスティックな物語を普遍的な活劇として描いた手腕を世界がどう捉えるか、意義深い上映機会となる。