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『車夫遊俠伝 喧嘩辰』
Rickshaw Man
車屋渡世を笑わば笑え! 江戸っ子車屋辰五郎と 浪花芸者喜美奴のラブコメ!

『車夫遊俠伝 喧嘩辰』

監 督:加藤泰

出 演:内田良平、桜町弘子、曽我廼家明蝶、北島三郎


制作国:日本

放送年:1964

時 間:100min

配給: 東映

あらすじ

短気で純情、江戸っ子やくざ車屋辰五郎が大阪へと流れてきた。御荷物御車の旗も勇ましく車辰の名声は高まったが、大阪北の大親分・西川一家の息のかかった車夫たちの反感を買ってしまった。そんな折に、西川親分が贔屓にする芸妓・喜美奴が、辰五郎に車ごと川に放り込まれてしまう。親分の前に引き出された辰五郎は、詫びもせずに喜美奴に結婚を申し込んでしまう。辰五郎の心意気に親分は惚れて仲人を買って出たが、親分の逮捕騒ぎが持ち上がり結婚は中止に。親分を密告した矢島一家の横暴に、堪えに堪えて一家を守る辰五郎だったが、矢島一家の凶弾に弟分・銀二郎の命を奪われ、押さえに抑えていた義侠熱血の魂が炎の如く燃え上がった。

みどころ

加藤泰のフィルモグラフィに彩を添えるロマンティックコメディ。内田良平=辰五郎の客を荷物扱いするクルマ憲法と、浪花芸妓・桜町弘子のテンポのいい意気地の張り合いが恋を生んでしまうという思えば不思議なストーリー。メリハリの効いたカットと編集の省略が映画原初の活劇感を生んで、このムチャクチャな物語を進めてしまうのだ。結婚式を前にラブが盛り上がって来ると必ずや事件が起こり、先送りにしてしまう仕掛けも楽しい。いきいきしたキャラクターの思い込みとプライドがすれ違いを生むラブコメ調の前半と、任侠モノを先取りした新旧組織の対立を背景に義理と人情の相克を描く後半と、エンタメ感満載の職人技にため息が出る。

監督:加藤泰

伊藤大輔作品など無声映画に夢中になり、叔父の監督・山中貞男を 頼り映画界に入る。51年に監督デビュー、東映を中心に時代劇・仁侠映画を監督する。60年代以降は各社で大型の作品にジャンルを越えて挑み、固定・ロー アングル・長廻しの手法と映画原初の力に溢れた活劇で評価を確立した。社会の枠外にいる男女の情熱と生きざまを慈愛と憤怒で物語り、ワイド画面の奥までに活きた人間が横溢する画面を作る凝視の演出力は世界映画史で異彩を放つ。98年のロカルノ映画祭での特集上映は、シネフィルを驚愕させる事件となった。ドメスティックな物語を普遍的な活劇として描いた手腕を世界がどう捉えるか、意義深い上映機会となる。