11月3日、京都文化博物館において映画『17歳の恋愛注意報!』(原題『Em chua 18』、英題『Jailbait』)上映後、本作の監督であるリー・ター・ソン(Le Thanh Son)さんによるトークが行われました。
聞き手は、東映京都撮影所の高橋剣さんです。

高橋:まず最初に説明させてください。
ヒストリカ映画祭の中で、これだけ歴史映画じゃありません。
なぜかというと、リー・ター・ソン監督は、京都フィルムメーカーズラボの卒業生なのです。
フィルムメーカーズラボは、ヒストリカ映画祭の一環で、世界から京都に来て、5分間の時代劇を撮ってもらうワークショップです。
2012年に京都を巣立った監督が、ベトナム映画の興行収入歴代記録を更新した作品をひっさげて、帰ってきてくれました。
とても嬉しいことですね。
京都で孵化した才能が帰ってくる。我々は「カムバックサーモン・プロジェクト」と呼んでいます。
監督、ラボの思い出を教えていただけますか?

監督:このような素晴らしい劇場で上映していただいて、とても嬉しいです。
一番後ろの席で映画を見ていたのですが、涙がほろりと出ました。
日本の皆さんが笑ってくれて、違う文化の人にも、気持ちが通じているんだと思って嬉しかったです。

5年前に京都に来た時、僕は若かったし、観客のためと言うより、自己満足のために映画を作っていました。
けれど、世界中の人と一緒に映画を制作して、お風呂も一緒に入って、自己中心的な心が消え去りました。
お風呂で、魔法のようにチームワークが良くなったのです。
最終日、三池監督や200名のスタッフと共に一本締めをして、大勢の人の気持ちが一つになることに感動しました。京都で人間的に一皮むけたと思います。

高橋:補足いたします。
ター・ソン監督は、ラボに来た時、すでにベトナムで長編映画デビューを果たしていました。
ラボには予算がなくて、生徒たちは個室ではなく、合宿です。20人で、男と女、2部屋に分かれて雑魚寝になります。
夜は銭湯にいきます。否応なくハダカの付き合いになります。
脚本には苦労していました。2日間で撮り終わらないといけないので。
ようやく撮り終えた夜、三池崇史監督が来て、皆でスタジオでバーベキューをしました。

ター・ソンがラボに来たときに監督をした男がいま東映撮影所の演出部にいます。本来は彼がここに来てインタビューするはずでしたが、撮影が入ってしまい私が代わりに来ました。その彼も、「ター・ソンは献身的で、人柄の良い男だった」と思い出を語っています。

監督:そんなことはないです! 当時の私は、野心的で荒っぽい性格でした。
京都から帰って若く見せようと、髪を切りました。
映画の中で、ホアンがヒップホップ的な服を着て、若作りしていたようにね。
若く見えた方が、スタッフが話しかけやすいと思ったのです。チームに溶け込もうと考えたのです。

高橋:若作りするプレイボーイのホアンには、監督が投影されてるんですか?

監督:ホアンが35歳、リンが17歳なので、カップルとして不自然にならないように、ホアンが若く、リンが大人っぽく見えるようにしました。
伝えたかったことは、異なる世代の二人が、共に時間を過ごす中で、本当の愛を見つけるということです。

高橋:なぜ年の差ものを撮ろうと?

監督:本当の愛を得ることは難しい。憎しみは乗り越えなくてはならない。許すという行為があって、初めて真実の愛にたどり着くということを描きたかったのです。

高橋:リンが通っているのは、国際インターナショナルスクールですよね。
わざと、皆があこがれるような学校を舞台にしているのですか?

監督:そうです。主人公たちは、お金持ちの設定です。生徒たちも、金髪や青など、ファッショナブルな髪をして、夢のような世界を演出してます。

高橋:ベトナムで史上最高の大ヒットとなったのも、あこがれの世界を描いているからなのでしょうか。



監督:理由の一つだと思います。ベトナム人はずっと待ってたんです。ハリウッドに負けない映画を。
お客さんは「ハリウッド映画を見ている場合じゃない!」と言って、何回も『17歳の恋愛注意報!』を見に来てくれました。
セリフを覚えてしまって、先取りして言ってしまったり、歌を歌い出すくらい、この映画を愛してくれました。

この映画は、リスクを取って作ったんです。検閲で引っかかる可能性もありました。
スターは出ていないし、監督の自分も有名ではない。
しかし、ベトナムドリームを信じて作ったんです。

高橋:パート2が決まっているそうですね。

監督:僕は続編より、ミュージカルを作りたかったのです。
しかし、プロデューサーが「ダメだ」と。
続編って、1作目より大変です。より面白いものを作らないといけないプレッシャーが強くて。
プロデューサーが「楽な方へ行くのか?」と詰め寄るので、続編を撮ることにしました。
今回は「18歳未満」(ベトナム版タイトル)というタイトルでしたが、続編は「18歳以上」というタイトルになります。
リンとホアンが結婚することになり、イギリスから母が戻ってくる。
リンは母が嫌いです。父と離婚したから。
リンは母親をイギリスに返すために一計を…という内容です。
ネタバレなので、この先は内緒です。

高橋:主演の女優さんが猫っぽくて、可愛いですね。
乱暴な女の子で、従来の美人のイメージとは違います。
なぜ彼女を選んだのですか?



監督:ケイティ・グエン(Kaity Nguyen)は最後に決まりました。
最初、5人の売れっ子女優さんと会ったのですが、気に入らない。
リスキーな内容の映画ですし、オーディションをして、広く募ることにしました。
それでも見つからない。

最後の最後に、ケイティが現れたのです。
背が低くて、目が大きい。アメリカ育ちなので、ベトナム語は下手でした。
しかし、ピンと来るものがありました。
カメラは回さず、シチュエーションを出して、演じてもらいました。
30秒で決めました。
プロデューサーには「テストしないの?」と聞かれましたが、もう心は決まっていました。

相手役は、再度、キャスティングし直しました。
20~30人の中から、ケイティに合う人を選びました。

脚本も書き直しました。
彼女は演技経験が無かったので、実生活に近い役の方が演じやすいだろうと思い、設定を書き換えたのです。

■会場からの質問&感想

質問者:リンの父がピアスをしていましたが、あれはオシャレですか?

監督:実は、お父さんは元ヤクザっていう設定なんです。入れ墨をしていて、家にはハーレーダビットソンがある。
とっても強いのですが、唯一、自分の娘には弱い。
そういうお父さん像が、私の理想ですね。