10月31日、京都文化博物館において、映画『上海キング』上映前に、監督のシャーウッド・フー(胡雪樺)さんによるトークがありました。
最初に、高橋剣さん(東映京都撮影所)により作品が紹介されました。

高橋:関西では初めての上映になります。会場を見たところ、ヒストリカ映画祭常連のアジア映画ファンの方々も来てくださっていますね。

フー:ヒストリカ映画祭20作品の一つに選ばれたこと、とても光栄です。
私は皆様とは初対面ですね。しかし、今日の観客のみなさんとは、映画を通じて、友達になれるといいなと思っています。
映画は国境を越えるものです。

この映画は、1905~15年、中国が大きな転換期を迎える時期の物語です。
清朝が倒れ、共和国が誕生したのです。
上海は特殊な都市です。
アヘン戦争の後、外国の租界ができました。西洋の文明が入り、モダンな都市になったのです。
北京が、伝統的な街であるとのは対照的です。

主人公の少女が、浦東から上海へ出てきて、マフィアのボスと恋に落ち、秘密結社で力を持ちます。
暴力シーンが出てきますが、私は力よりも、人間同士の信頼や信念が大事だということを描きたかった。

原作者の女性・虹影(ホンイン)とは、2003年に初めて会いました。
「フー監督は『蘭陵王』以来、アメリカに行ってしまって、中国では映画を作っていませんね」と言われました。
「今、執筆しているのは、女性がマフィアのボスになる話です」
と聞いて、私はすぐに映画化したいと思いました。
10日間に及ぶ打ち合わせして、1万語ほどのプロットを読ませてもらいました。
北京を離れる前に「映画化権を買います」と彼女に伝えました。

10ヶ月後、原作の小説「上海王」が出版されました。
ただ、映画化には時間がかかりました。
この話は、少女とマフィアのボス、三代にわたる話です。
小説はすばらしい内容でしたが、時間的な制約もあり、そのまま映画にはできません。
構成し直すのに、10年かかりました。
脚本に入れた言葉は、必要不可欠なものと思っています。
『上海王』の脚本は、2008年に台湾の賞を受賞しました。それから6年かけて推考して、2014年に撮影に入りました。

俳優にもスタッフにも恵まれました。
私のハリウッド時代の仲間も、多く参加してくれました。
撮影監督は、『パーフェクション』のアンドリュー・サクラ。
美術監督は、『トワイライト』のデイビット・ブリスデン。
音楽は、『ラン・ローラ・ラン』のジョニー・クレメント。
「ハリウッドばかりで、中国のスタッフは使わないの?」と聞かれることもありましたが、上海の文化の基本は西洋です。西洋のセンスで撮りたい。
私はアメリカでずっと仕事をしてきたので、意志疎通が上手くいくということもあります。

この時代のギャングは、中国でもハリウッドでもよく映画になっています。私は違うものを撮りたいと思いました。
暴力の裏側にあるものを撮りたい。



私が師と仰ぐフランス・コッポラの『ゴッドファーザー』のテーマは家族です。
コッポラと食事した時に、「私の次の映画はゴッドマザーの話です。ゴッドファーザーのオマージュです」と言ったら、コッポラは「グッド」と言って、笑っていました。

東京でこの映画を上映した後、お客さんに「中国版のゴッドファーザーですね」と言っていただけで、うれしかったです。
私はコッポラの弟子を自認していますので。
皆様にも、きっとこの映画が気に入っていただけると信じています。