上映後に宮地昌幸監督をお迎えして、京都文化博物館の学芸員の方とお話された

ティーチインの概要をお伝えします。

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まず、監督が最初にアニメ化のお話をもらった時は、

まだ桜庭一樹先生による原作、「伏 贋作・里見八犬伝」が連載途中の段階だったとか。

本来6時間にもなりそうなお話で、映像化は難しいのでは・・と保留していたそうです。

ですが、浜路と信乃の話をクローズアップすることで、可能になるのではと思い、

桜庭先生にも自由にしてもらっていいと言って頂いたことで、制作を始められたそうです。


まず、若い人達には時代劇を中々観てもらえない…という点をどうするかということで、

浜路が山から山から下り、江戸へ上京して来るシーンにおいて、

若い女の子が上京した時に、ここに住みたいと思えるように工夫をされたそうです。

また、長屋の壁に和柄のポスターなどを配置してみたり、兄の道節と住む長屋にロフト的な中2階を

作ったりと、様々な箇所において若い女の子が興味を惹く要素を盛り込んだというお話でした。


このロフトについては、実際に制作の若い女性の話を聞かれて、

「東京=ロフト=お洒落」のような図式の意見を取り入れられたそうです。

そして、「コードギアス」の大河内一楼さんが、女の子や女心を描かれるのがとても上手なので、

乙女をよろしく、と託されたそうです。


キャスティングについては、作画の作業の都合上、すぐに発注できないので、

作業を進めながら決めていかれたとのこと。

日本のアニメの作り方は大体アフレコで、あとから声をあてる方法が主なので、

「かぐや姫の物語」のように、声が先のケースは珍しいそうです。

なので、絵のイメージに合う声の声優さん・俳優さん等に依頼するわけですが、

道節役の小西克幸さんに関しては声のイメージがぴったりだったので、

ほとんど決め撃ちの状態だったそうです。

信乃役の宮野真守さんは、監督曰く「めっぽう上手い」とのことで、

役を掴むのがとにかく早いそうです。1回読んで頂き、即決だったとのことでした。


監督は、キャスティングする際に声優さんの世間的な評価など、先入観を持たないために、

わざとそういった情報は遠ざけておられるそうです。

浜路役の寿美菜子さんが、関西の京阪電鉄のキャラクター・おけいはん2代目のCMに

出演されていたことも、学芸員の方に聞いて初めて知ったご様子でした。


寿さんもめちゃくちゃ上手だったとのことで、

浜路が恋をした後の一人称が「俺」から「わたし」に変わるにあたっての変化なども、

絶妙に演じられたそうです。


ここで物語についてのお話に入っていきますが、

学芸員の方のお話では、この作品の脚本はすごくロジカルにできているとのこと。

正と偽、善と悪、男と女、そして真と贋であったり、

監督はそういった対比するものを、画面の中で描いていきたかったそうです。

ちなみにこの真贋は、原作からもらったモチーフだそうですが、

登場人物の徳川家定と信乃にしても、対比しているということです。

がんじがらめで傀儡のようにされている状態に耐えられない家定。

本当の自分になれていない苦悩をこじらせてしまい、

伏(犬)の首を狩るような政治を行っている状態に対して

信乃は自由に生きているようでありながら、とても大きな寂しさを抱えている。

そしてそれがどうしようもない程、心が乾いてしまった時に人間の生き肝を食べる。

そう考えると、立場は全く違いながらも、両者とも人間であるがゆえの苦悩を抱えているということなのかもしれません。

冒頭、浜路が山を下りる前に、猟師である彼女が白い犬を撃つのですが

仕留めた犬が涙を流しているのを見て、狩りをやめてしまった。

ふと寂しいと思ったわけです。

吉原の太夫・凍鶴のエピソードにしても伏でありながらとても人間的で、

他の登場人物に関しても、総じて人間的に、魅力的に描かれているのが、

この作品にぐいぐい引き込まれて2時間弱、夢中で鑑賞できた一番の理由だと感じました。


少し話がティーチインからそれましたが、ここで小道具などのお話を。

信乃が着けているお面ですが、原作では頭巾だったそうです。

浅草にロケハンに行かれた際に目にして考えられたとのことです。

そして深川一座の看板役者を勤める信乃の身の回り・楽屋にありそうな物。

これについては、武器として使う千枚通しも、台本を綴じる時に使ったりするので

小刀などを持っているよりもいいかな、と思われ使われたそうです。


最後に、ツイッターで頂いたという質問に、監督が数件答えられていましたのでご紹介します。


Q  監督は枠にとらわれた表現はされたくないとのことですが、

   逆に江戸時代といえばここは外せない!というこだわりは?


A  やはり長屋暮らし、吉原、江戸城、喧嘩と火事といったモチーフですが…

   今までのイメージ通り作っても面白くないので、長屋暮らしに関しては

   住みたいと思えるような小道具であったり、あったら楽しいと思えるような作りにしました。

   吉原のモニュメントは3Dなのですが、実は一番お金がかかっています(笑)


Q  鮮やかな紫が印象的に使われていると思うんですが、意図されてですか?

A  まず、キャラクターのキーカラーになるものを設定していました。

   信乃はピンク、浜路は黄色。

   その中で冥土は紫なのですが、これは最初敵かな…?というようなミスリードをしたかったのもあり、

   ちょっと悪者っぽい?紫にしました。

   そして、冥土のおじいちゃん・馬琴は目が見えないわけですが

   昔、紫は目が見えない人でも判別できる、という言い伝えがあったのでその色にしました。


Q  イメージに影響を与えた作品があれば教えて下さい。

A  是枝裕和監督の「花よりもなほ」は、長屋暮らしを楽しく描いていて参考になりました。

   そしてやはり黒澤明監督の作品は色々参考になります。

   「用心棒」のエンターテイメント性だとか。「影武者」なども。

   あとは「百万両の壷」でしょうか。


Q  次にやりたいものを教えて下さい。

A  架空のものは、面白いので撮っていきたいです。

   そして、江戸時代などでも、SFと思って撮るような。

   未来を舞台にしていても、皆がイメージするようなものは面白くないのではないかと思います。 

   やたらテカテカしてたりとか…(笑)

   例えば「ブレードランナー」の描写は未来の設定ですが、

   ずーっと雨降りで湿気ていて、そんな世界だったらどうなんだろう?という発想から来ているわけです。

   そういった感じで、視点を変えてみることが大事かと思います。


ボランティアスタッフ さたかおる

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