12月13日、京都文化博物館において、「キートンのセブンチャンス」上映後、
「るろうに剣心」アクション監督の谷垣健治さんによるミニトークが行われました。
聞き手は、東映の高橋剣さんです。

谷垣さん:「キートンのセブンチャンス」は、1日の中で、恋と財産に振り回される人々 を描いてます。キートンが30歳の時の作品です。
僕がキートンを知ったきっかけはジャッキー・チェン。
斜面を駆け下るシーンは、ジャッキーの「ポリス・ストーリー」でも見ることが出来ます。

斜面のシーンは、撮るのが難しいんです。
普通は傾斜がわかるように、やや横目からカメラを傾けたりして撮ったりするんですが、これは完全サイドショットで撮ってます。
傾斜がほぼ90度。危険すぎる(笑)。役者にやらせられないですね。

お客さんが「おおっ」って言うのも、スタントマン使わずにキートンが自分でやってるからだと思います。

ラストの犬が舐めるシーンも、どれだけ時間がかかったのだろうと思います。
今なら、分刻みのスケジュールで映画を撮るので、「できるまで撮り続ける」というのは無理です。

後半は、セリフもほとんど無くて走ってるだけ。
ストーリー的には、走るシーンは、あんなに長くなくても良いはずです。
これで「そんなに長く撮る必要はない」と言ってしまえば、それは確かに正論ではある。だけど、娯楽にそういうバランス感覚って必要か? この映画で必要なのってそういうことか?ってね。
これを見ると、アクション映画はカロリー過多じゃないと!と思います。
ネタの寄せ集めで、面白さが成立してるんですね。

「るろうに剣心」を撮ってる時、助監督から「120分しか使わないのに、180分撮るのはアホ」と言われました。
でも、僕は無駄とは思いません。
120分きっかりしか撮らないという姿勢だから、スカスカな映画になってしまう。
もっと濃厚な、密度の高いアクション映画があってもいいんじゃないかと思うんですね。

高橋さん:でも、撮影所ではごく一般的な考えですよ?

谷垣さん:そうですね。でも、キートンを見てると、きっと一つのカットを撮るために、何度もやり直したのだろうと思います。

高橋さん:メインストーリーだけだったら、30分で終わりそうですね




谷垣さん:それを言うなら、「おじいさん死んだら新聞に載るだろう」とかツッコミどころ満載ですよ。でもそれを感じさせないパワーがあるんです。

走るシーンというのは重要で、難しいです。
速さを見せるために、対象物が必要ですから。
剣心と宗次郎みたいに、狭い空間で追いつ追われつとか。車に追いついて飛び乗るとか。

本当なら「るろうに剣心 京都大火編」でも、何百人って追われるような縦ラインの戦闘シーンを撮影したかったんです。
しかし、撮影したワープステーションには、十分な縦のスペースがありませんでした。
なので、「キートンのセブンチャンス」には及ばないのですが、50対50で戦うシーンを撮りました。
縦のラインを撮れないから、クレーンで上に行って。
集団の使い方を、「キートンのセブンチャンス」から凄く勉強しました。

「キートンのセブンチャンス」のラグビーシーンは、何が起こるか見た瞬間に予想がつく。
でもウケる。予想を裏切らないすごいシーンが展開されるから。
活動弁士の効果って凄いと思います。広川太一郎みたい。

それに、今の映画と違って、カメラが寄らなくても状況が分かるっていう、キャラの立ちっぷりも凄い。

この映画は、プロデューサーが、キートンに「ロイド映画っぽい、都会の若者ががんばる 話を」と言って原作を用意したらしいです。
キートンは、俺のスタイルとは違う、と悩みながら撮ってたら、
たまたまぶつかって転がり出した岩に追われるカットを試写で流したところ、ウケたから、そこを ふくらませたということです。ここだ!というポイントを的確にキャッチしてそこをどんどん膨らませていく。
撮りだしてから変えられる当時の状況、羨ましいですね。

意外かもしれませんが香港の人は、全くキートンを知らないです。
ジャッキーはアメリカに行って、キートンを知って衝撃を受けたそうです。



僕は、ディアゴスティーニのジャッキー・チェンDVD全集の解説やってるので、最近ジャッキー作品を見直す機会が多いのですが彼は
ジーン・ケリー、キートン、ロイドの影響を凄く受けてるんです。あとダグラス・フェアバンクスとか。

キートンについては、「キートンのセブンチャンス」と「キートンの蒸気船」をメインに 見てたのかなと思います。
「キートンの蒸気船」で、風がブァーッと吹く中ですごい転がり方をするあた り、「プロジェクト・イーグル」でまんま再現されてますね

「ポリス・ストーリー」では、走行中のバスに傘でぶら下がるシーンから、映画らしい躍動感が出ます。
「キートンのセブンチャンス」では、花嫁たちに追われる瞬間から、スピード感が段違いです。
「映画になる瞬間」っていうんですかね、そういう場面がある映画はずっと心に残ります。

キートンが後頭部ぶつけながら3回連続で転がるカットなんか、客席から「おお、おお、おお!」って声が上がりましたね。
映画を見慣れてる現代の人でも、新鮮な驚きがあるということです。

昔は、主演が監督も兼ねていたので、怪我しても、治ったらまた撮れば良いという考えでした。
キートンは、この2年前に「探偵学入門」を撮って、最高の興行収入を記録しました。
ノリにノった時期でした。

大きなスクリーンで見ると、ディテールに気づいて、良いですね。
今だと観客に優しいから、カメラがアップにしてくれたりするけど、この当時は、1シー ンに色んな情報が詰まってて、ちゃんと見ないと分からないです。

「るろうに剣心」で、福山さんが指でコイコイってしてるの、ブルース・リーが元ネタだって、若い人は知りませんでした。

今回、京都ヒストリカ国際映画祭のために選んだ映画8本は、全て現場で役者とスタッフに参考にしてもらった作品です。
最初、歴史って縛りを分かってなくて、現代ものも勧めてしまいましたが(笑)