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『沓掛時次郎 遊俠一匹』
Tokijiro of KutsukakeLoan Yakuza
心ならずも斬った男の 女房子供との旅をゆく時次郎。 抒情と憤怒のロードムービー

『沓掛時次郎 遊俠一匹』

監 督:加藤泰

出 演:中村錦之助、池内淳子、渥美清、東千代之介


制作国:日本

放送年:1966

時 間:90min

配給: 東映

あらすじ

一宿一飯の恩義のために、斬った男の女房・おきぬと、子どもを連れて故郷の沓掛村に向かった時次郎が、やくざ渡世の掟の愚かさを知りつつ、瀕死の重病にかかったおきぬのために再びドスを握り、戦いの中に自ら飛びこんでいく。街道を行く助っ人稼業の沓掛時次郎に身延の朝吉は説得されながらも、時次郎を兄のように慕っていた。佐原の勘蔵一家に助っ人として迎えられた二人だが、時次郎は喧嘩の当日、勘蔵の娘お葉から草鞋銭をうけとると、朝吉を連れて勘蔵一家を後にした。助っ人稼業のむなしさを知りつくしている時次郎の行動に、納得のゆかぬ朝吉は、単身牛堀一家に乗り込み殺された。時次郎の怒りは爆発した。

みどころ

加藤泰人気は山根貞男、上野昻志らが牽引し1960年代末から高まるが、観客や批評家を最も唸らせたのが本作だろう。旅人時次郎と子連れの若後家おきぬは、渡世の義理と背反する思念を抱え持ってしまう。二人の危うさが孕む予兆が繰り返し緊張を強いる旅、それぞれが背負うドラマの可能性が旅のあらゆる場面で観客をおびやかすのだ。中村錦之助と池内淳子はともにキャリアの絶頂にあり、抒情も怒りも自在に描いてみせる。そして、漆黒の闇に降りつむ雪と、分たれたふたりを結ぶ追分の調べ・・・。このドメスティックな物語が98年のロカルノ映画祭で絶賛で迎えられたという。活劇がもつ普遍性を刻み付けた世界映画史に残るマスターピースなのだ。

監督:加藤泰

伊藤大輔作品など無声映画に夢中になり、叔父の監督・山中貞男を 頼り映画界に入る。51年に監督デビュー、東映を中心に時代劇・仁侠映画を監督する。60年代以降は各社で大型の作品にジャンルを越えて挑み、固定・ロー アングル・長廻しの手法と映画原初の力に溢れた活劇で評価を確立した。社会の枠外にいる男女の情熱と生きざまを慈愛と憤怒で物語り、ワイド画面の奥までに活きた人間が横溢する画面を作る凝視の演出力は世界映画史で異彩を放つ。98年のロカルノ映画祭での特集上映は、シネフィルを驚愕させる事件となった。ドメスティックな物語を普遍的な活劇として描いた手腕を世界がどう捉えるか、意義深い上映機会となる。