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『瞼の母』
In Search of Mother
念願の長谷川伸の企画を脚本監督。 オールセットながら充実したカットは 加藤の盛んな意気を感じさせる

『瞼の母』

監 督:加藤泰

出 演:中村錦之助、木暮実千代、松方弘樹、沢村貞子


制作国:日本

放送年:1962

時 間:83min

字 幕:English

配給: 東映

あらすじ

番場の忠太郎は、金町で弟分半次郎を思うお袋の愛に触れ、代わりに飯岡一家と対決し、半次郎を逃がしてやる。幼い頃に別れた母を探して江戸の街を歩き回る忠太郎だったが、折しも忠太郎を仇と狙う飯岡一家も江戸の町に入っていた。飯岡一家に加勢した金五郎が料理茶屋“水熊”に喰らいつき無心を重ねていた。偶然に助けた夜鷹から聞き、別れた母かを確かめに“水熊”に。「もしやおっ母さん、忠太郎でござんす」「忠太郎さん、親を訪ねるのなら何故堅気になっていないのだえ」と冷たく突き放す実の母。「おッ母さんに逢いたくなったら、こうして上と下の瞼を合わせ、じっと眼をつむります。」ふたたび血の雨を降らして凶状持ちの身を哀しく隠す忠太郎…。

みどころ

正月興行を予定していた人気絶頂の中村錦之助主演作品が延期になり、急遽お鉢が回ってきた加藤泰は念願であった長谷川伸原作の企画を願い出た。アウトローの生き方にこだわったフィルモグラフィを振り返ると本作が転回点だったことが見て取れる。与えられた撮影期間14日間、B班を立てての強行撮影では、のちに代名詞となる長廻しも早撮りの手段だったかも知れない。ロングショットでも耐えうる錦之助の共演は沢村貞子、浪花千栄子、夏川静江ら芝居巧者を揃え、木暮実千代とのクライマックスに向かっていく。現在の観客には人情メロドラマと見えるかも知れない。が、緩みない構成と観客の目線を外さない役者たちの濃密な物語には今でも力がある筈だ。

監督:加藤泰

伊藤大輔作品など無声映画に夢中になり、叔父の監督・山中貞男を 頼り映画界に入る。51年に監督デビュー、東映を中心に時代劇・仁侠映画を監督する。60年代以降は各社で大型の作品にジャンルを越えて挑み、固定・ロー アングル・長廻しの手法と映画原初の力に溢れた活劇で評価を確立した。社会の枠外にいる男女の情熱と生きざまを慈愛と憤怒で物語り、ワイド画面の奥までに活きた人間が横溢する画面を作る凝視の演出力は世界映画史で異彩を放つ。98年のロカルノ映画祭での特集上映は、シネフィルを驚愕させる事件となった。ドメスティックな物語を普遍的な活劇として描いた手腕を世界がどう捉えるか、意義深い上映機会となる。